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外国人が日本で会社経営するには
■就労に制限のない「特別永住者(※)」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格で日本に居住する外国人は、日本人と同じように適法に、会社の経営・管理を行うことができます。
※「特別永住者」は「入管特例法」に定められた在留資格(韓国人、朝鮮人、台湾人の方々に多い)。
■しかし、就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際」等)で日本に居住する外国人が会社の経営・管理を始める場合は、在留資格を「経営・管理」(「経営管理ビザ」)に変更する必要があります。
■また、海外居住の外国人が、日本で会社の経営・管理を始めるためには、在留資格「経営・管理」(「経営管理ビザ」)を取得して来日する必要があります(認定)。
「経営管理ビザ」によって可能な活動の範囲
■新たに事業経営を開始したり、その事業の管理に従事
■日本で既に営まれている事業に参画して経営・管理に従事
■既に経営を行っている者に代わって経営・管理に従事
■「経営を行う」:代表取締役(社長)、取締役などの役員として重要事項の決定や業務の執行を行う
■「管理に従事」:支店長や工場長、部長などの管理者として働く
「経営管理ビザ」を取得する条件(入管法上の「上陸許可基準」)
■申請人が新たに事業経営を開始しようとする場合
①事業を営むための事業所として使用する施設(事務所・店舗等)が日本に確保されていること
※施設の不動産登記簿謄本や賃貸借契約書等の資料が必要
②次のいずれかであること
ア)経営・管理に従事する者以外に、日本に居住する2人以上の常勤の職員がいる「事業規模」であること
※「常勤の職員」は、日本人、あるいは「特別永住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」でなければなりません。
イ)資本金の額または出資の総額が500万円以上であること
※ただ500万円以上を出資すればよいというわけではなく、その出所(誰がどのように調達したか)を問われます。
③事業の経営・管理に実質的に従事すること
④事業内容が実現可能であり、安定性・継続性があること
※具体的な事業内容や収支見込についての事業計画書が必要となります。
■申請人が事業の管理に従事しようとする場合
①事業の経営または管理について、3年以上の経験(大学院において経営または管理に科目を専攻した期間を含む)を有すること
②日本人と同等額以上の報酬を受けること(目安として、月25万円以上)
■「経営管理ビザ」で許可される在留期間は、5年、3年、1年、4カ月、3カ月です(新規で会社設立し事業開始の場合は「1年」になるケースが多いようです)。
「経営管理ビザ」の実際のハードルの高さ
■「経営管理ビザ」の取得条件(上陸許可基準)をクリアすることは、そう簡単なことではありません。
■「申請人が新たに事業経営を開始しようとする場合」、海外に居住する外国人が日本で起業しようと思っても、それら基準をクリアするためには、事実上、日本居住の協力者がいることが必要となります。
■「経営管理ビザ」の申請までの流れ
※以下①から⑦までは、日本居住の協力者(発起人)に手続きしてもらうことになり、また⑧は日本における申請代理人(行政書士等)が必要になる。
①事業所を確保する(まずは個人名義で賃借することになるでしょうが、申請前には会社名義に変更する必要があります)
↓
②会社の基本事項を定め、「定款(会社のルールブック)」を作成する
(「定款」の絶対的記載事項の一つとして、発起人(出資や会社設立手続きを行う人)を定めなければならない)
↓
③公証役場で「定款」認証してもらう
↓
④会社の資本金の払い込み(発起人の銀行口座への振り込み)をする
↓
⑤法務局で法人設立登記をする
↓
⑥税務署へ各種届出をする
↓
⑦許認可が必要な事業を行う場合、必要な許認可を取得する
↓
⑧「経営管理ビザ」の申請
■日本国内で各種手続きを済ませた上で、最後に「経営管理ビザ」の申請を行うということになるため、その各種手続き、なかでも、事業所の賃貸借契約をしたり、資本金の振り込みを銀行口座で受け取るには、日本居住の協力者(発起人)が欠かせないということになるのです。
■一方で、各種手続きを終えているにも関わらず、最終的に「経営管理ビザ」が許可されないということもあり得ます。
「経営管理ビザ」(4カ月)の新設
■2015年4月の入管法改正により、4カ月の「経営管理ビザ」が新設されたことにより、4カ月間での手続きは極めてハードではありますが、外国人1人だけ(※)でも(日本に協力者がいなくても)、「経営管理ビザ」を取得して、日本で起業することが可能となりました。
※実際上は、ビザの申請代理人(行政書士等)は必要になります。
■2015年4月の入管法改正前にも、3カ月の「経営管理ビザ」はありましたが、在留カードが発行されない(3カ月以内の在留資格に在留カードは発行されない)という難点があり、これでは住民登録・印鑑登録・銀行口座開設ができず、せっかく起業のために日本にやってきても、結局、会社設立手続きが進められないという問題点がありました。
■そんなどうしようもない状況が、法改正で4カ月の「経営管理ビザ」が新設されたことにより一変します。
■この4カ月の「経営管理ビザ」は在留カードが発行されるので、住民登録・印鑑登録・銀行口座開設ができるようになり、来日後に日本の銀行で自分の口座を開設し、その口座に資本金を払い込みすることができるようになったのです。
■ただし、4ヵ月の「経営管理ビザ」であっても申請段階で、会社を設立しようとしていることが分かる書類として、定款案、事業計画書が必要になります。
■また「経営管理ビザ」は日本の出入国在留管理局に申請するため、定款案や事業計画書の作成が大変であることに加え、申請自体にそもそも申請代理人(行政書士等)が必要となることから、実際は、海外居住の外国人が全くの独力で4ヵ月の「経営管理ビザ」を申請(在留資格認定証明書交付申請)し、そして来日するというのは決して簡単ではありません。
■無事、4カ月の「経営管理ビザ」が取得できたら来日し、以下の手続きを進めます。
①日本での住所を定め、住民票登録を行う
②住民票登録を行うとともに、印鑑登録を行う
③事業所を確保する
④日本の銀行において、申請者本人の銀行口座を開設する
⑤申請者本人の口座へ資本金の振り込みを行う
⑥会社設立登記を行う
⑦会社の銀行口座を開設し、資本金をこの口座に移す
⑧事務所の設備(デスク、事務機器等)を整える
⑨議事録を作成し、申請者本人の役員報酬を決定する
⑩税務署、年金事務所に届出書類を提出する
⑪許認可等が必要な業種の場合、免許・許可を取得し、または届出・報告を行う
■これらの手続きを4カ月以内に行うのは、大変ハードな作業であり、4カ月以内にやり切るという覚悟が必要です。
■無事にこれらを4カ月以内に完了させられたら、次に「経営管理ビザ」の更新手続きを行う必要があります(在留期間更新許可申請)。
■4カ月の「経営管理ビザ」の更新申請を行った場合、1年の「経営管理ビザ」が発行されるケースがほとんどのようです。
■「経営管理ビザ」の更新が認められたということは、すなわち4カ月の間に事業開始のための準備が整ったということに他ならず、まさにここから、経営者として事業活動を開始し、本領発揮していくことになるのです。