目次
(この記事は最新情報である)
帰化について、国籍法第4条では
・日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる
・また帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない
と定められています。
※帰化の申請先は、申請者の住所地を管轄する法務局となります。
帰化の要件について
国籍法第5条~第9条では、帰化の要件を定めています。
国籍法第5条では「普通帰化要件」について以下の通り定めています。
⑴引き続き五年以上日本に住所を有すること。(居住要件)
⑵十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること。(能力要件)
⑶素行が善良であること。(素行要件)
⑷自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。(生計要件)
⑸国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。(重国籍禁止要件)
⑹日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。(憲法遵守要件)
また国籍法の要件ではありませんが、もう一つ、重要な要件があります。
⑺日本語能力が問われます。(日本語能力要件)
では上記⑴~⑹の「普通帰化要件」及び⑺の「日本語能力」について、さらに詳しくみていきます。
帰化の要件(普通帰化要件)
(1)引き続き五年以上日本に住所を有すること。(居住要件)
①入国→留学2年→就労3年→申請(OK)
②入国→留学4年→就労1年→申請(NG)
※(法律の条文では分かりませんが)原則、5年のうち、3年以上就労(正社員、契約社員、派遣社員など、アルバイトはNG)していることが必要です。
③「引き続き」とは
→5年間の間に連続して3カ月以上出国していないこと(法務局によっては2カ月というところもあります)
→年間合計で100日以上出国していないこと(途切れ途切れで出国していたとしてもその合計)
⑵十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること。(能力要件)
①18歳(日本の成人年齢)に達していない場合は、帰化申請はできません。
※ただし、18歳に達していなくても、親と同時であれば帰化申請可能です。
②本国法(その人の国の法律)でも成人年齢に達していることが必要です。
※国によって成人年齢は異なります。
例)中国:18歳(日本と同じ) 韓国:19歳 ニュージーランド、タイ:20歳 シンガポール、エジプト:21歳
⑶素行が善良であること。(素行要件)
①納税義務を果たしていること
→住民税、所得税、事業税、消費税などをきちんと納付していること。
②年金に加入していて、きちんと納付していること。
→年金に加入していない場合は、必ず加入し、過去2年分の保険料を納付する必要があります。
→年金に加入していても、過去直近2年間に1カ月でも未納がある場合は、その未納分を追加納付する必要があります(最大で2年分)。
→過去に適法に年金保険料の免除を受けていた場合でも、過去直近で最大10年間(免除を受けていた期間)の免除分を納付する必要があります。
※免除期間の納付が必要になってくるのは、「生計要件」と関係します。
③交通違反をしていないこと
→過去2年以内に、交通違反(反則金:駐車違反、一時停止無視など)を3回以上繰り返していないこと。
→罰金刑(30キロ以上のスピード違反=いわゆる「免停」など)や、人身事故、飲酒運転などの重大な交通違反をしていないこと。
→免許停止や取り消し処分を受けていないこと。
※これらを犯してしまっても、一定の条件をクリアしたり、一定期間が経過 すれば、申請可能となります。
④前科、犯罪歴がないこと
→暴力団に加入していたり、家族に暴力団員等がいる場合も、不許可になる 可能性があります。
※罰金刑の場合、罰金の納付(完納)の時から、一定期間が経過すれば、申請可能となります。
⑤法令違反を犯していないこと
→過剰に家族を扶養に入れていたなど
⑷自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。(生計要件)
①申請者本人や配偶者など、一家族で収入を合算し、年収が3百万円以上であることが求められます(公表されていない)。
②被扶養者が4人以上の多人数になってくると、年収3百万円では足りないと考えられます。
③預貯金はあるに越したことはないが、なくても大丈夫(重要なのは収入)。
⑸国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。 (重国籍禁止要件)
①日本は原則として二重国籍を認めていませんので、帰化した際には現在の母国籍を離脱する必要があります。
②ただし、国籍離脱を認めない国が存在する可能性を考慮して、そのような国の国籍を有する者からの帰化申請については、状況により、上記5.の母国籍喪失の可能性を問わない場合もあります。
⑹日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。 (憲法遵守要件)
例)テロリスト集団に所属している人、過去にそのような組織に加入していた人など
⑺日本語能力が問われます。
①帰化申請後、審査官との面接において、日本語で受け答えができる日本語能力が必要になります。
②小学校3~4年生程度(日本語能力テスト:N3~N4レベル)の日本語能力が必要となります。
では次に「普通帰化要件」を緩和する「簡易帰化要件」について、具体的にみていきます。
帰化の要件(簡易帰化要件)
「簡易帰化」とは、一定の条件を満たす場合、国籍法第5条の「普通帰化」よりも 申請要件が緩和されるというものです。 国籍法第6条~8条で「簡易帰化要件」について定められています。
⑴国籍法第6条【(居住要件)(就労要件)の緩和 】
以下のいずれかの場合、「居住要件:5年以上」が緩和されます。
①日本国民であった者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの。
例)日本人の親が、外国籍に帰化した後に生まれた子供(元日本人の子)
②日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し(例1)、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの(例2)。
例1)日本で生まれた外国人 なら、3年以上日本に住んでいればよい
例2)日本で生まれた外国人で、その父母のどちらかが日本生まれの外国人
さらに以下の場合、「居住要件」に含まれている「就労要件:3年以上」が 緩和されます。
③引き続き十年以上日本に居所を有する者。
例)入国→留学9年→就労1年→申請(OK)
※「5年以上居住」+「3年以上就労」のルールが外れ、「1年以上就労」で OKとなる。
⑵国籍法第7条【(居住要件)(能力要件)の緩和 】
以下のいずれかの場合、「居住要件:5年以上」と「能力要件:18歳 以上」が緩和されます(18歳に達していなくても申請できます)。
①日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの
例)入国→留学・就労3年→日本人と結婚→申請(OK)
※日本に3年以上住んでいる外国人の方は、日本人と結婚した時点でこの要件を満たします。
②日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するもの
例)婚姻→2年間海外で生活→1年間日本で生活→申請(OK)
※海外で結婚し、海外で2年以上生活した後に来日し、その後継続して日本に1年以上住んでいる方が該当します。
注)過去にオーバーステイ歴がある人は、日本人の配偶者であっても在留特別許可の時から10年以上日本に住所を有する必要があります。
※在留特別許可とは
入管法24条各号で規定される退去強制事由に該当するため本来は退去強制される外国人に対し、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると判断し、その裁量により例外的に与える在留許可
⑶国籍法第8条【(居住要件)(能力要件)(生計要件)の緩和 】
以下のいずれかの場合、「居住要件:5年以上」と「能力要件:18歳 以上」、「生計要件」が緩和されます。
※「生計要件」が緩和されるとは、本人や家族の収入で生活できない場合であっても(極端に言うと無
収入でもよい)、帰化申請できるということです。
①日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの。
例1)日本人の実子で(父母どちらかが日本人であればよい)、日本国籍を選択しなかったもの。
例2)日本に帰化した外国人の子(親が帰化した時点で該当)。
②日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの。
例)(本国法で)未成年の時に親の再婚で連れ子として来日し、その日本人(義理の父または母)と養子縁組をしたもの。
③日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く。)で 日本住所を有するもの。
例)元日本人(現在は外国籍)が、帰化によって再び日本の国籍を取得する場合。
④日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの。
⑷国籍法第9条《「大帰化」といいます》
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定に かかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
※2023年現在、大帰化が認められた事例はありません。