目次
(この記事は最新情報である)
帰化の居住要件変更の可能性
■新政権(高市政権)の発足後、外国人政策の議論が一気に進みだした感があります。
■外国人政策の議論の中で、とりわけクローズアップされているものの一つに、帰化の要件の厳格化があげられます。R7年11月25日、帰化要件を厳格化する方向で政府が検討しだしているという報道が相次ぎました。
■日本経済新聞によると、高市総理大臣が平口法務大臣に、帰化厳格化検討を指示したとのことであり、その検討課題の柱は「居住期間」に関する条件ということです。
■R7年7月の参議院選挙の前あたりから、帰化は5年以上、永住は10年以上という居住要件は、帰化の居住要件が緩くないか、という議論が噴出していたわけですが、まあ、とうとうここにきて、帰化の居住要件「5年以上」の延長が、検討段階に入ったとのことなのです。
■R8年1月に、この帰化の居住要件も含め、外国人政策の具体案が出てくるとのことです。
■この帰化の居住要件「5年以上」の延長は、現実味がありそうです。いろいろな意見があるかと思いますが、やはり「帰化5年」「永住10年」は、バランスを欠いていると言わざるを得ないかもしれません。
■一方で、「永住」と帰化を比較すること自体にも違和感はあります。帰化は日本語能力が求められるのに対し、「永住」は日本語能力が求められません。
■また日本は二重国籍を認めていませんから、帰化するということは自分の生まれ育った国籍を捨てるということに他ならず、帰化しようとする人には相当な覚悟が必要なはずなのです(逆に言うと、永住者になるのに覚悟など要らないはずです)。
帰化の居住要件「5年以上」実施の時期は、そして直近の政府の動き
■実際に帰化の「5年以上」が延長になるとして、では、その時期は、どうなるのか。
■「5年以上」というのは、国籍法第5条で、つまり法律で明確に定められているのですから、この居住要件を変更するのには、国籍法の改正が必要になるものと思われ、その法改正にはそれなりに時間がかかるものと思われます。
■法律案の作成→閣議決定→国会での審議(両院での可決)→成立→公布→施行という流れ。
■法改正を伴うなら、10月にあった「経営・管理」ビザの許可要件の突然の厳格化みたいなことは、帰化では起こりようがないようにも思えます。
■しかし、先ほど申し上げた、法律案の作成→→→施行までの時間が結構なスピードで進むということは考えらます。もしかしたら、1年以内に施行まで進んでしまう、というようなこともあるかもしれません。
■ちなみに、昨年(R6年)に大きなニュースになった「永住」の取り消し。
■R6年6月14日に「永住」の取り消しを含む、改正入管法が成立し、その1週間後の6月21日に改正法が公布されました。
■「永住」の取り消しについては、1年半近く経つ今も、いまだ実施はされておらず、R8年4月1日施行と言われています(決まっていません)。
■この、「永住」の取り消しのスピード感からすれば、今回の帰化の「5年以上」の延長という国籍法第5条の法改正も、それが仮に成立したとしても、その法律の施行まで2年くらいかかるのでは、と思ってしまうわけですが、国籍法の法改正の場合のスピード感がどうなるかは、全くわかりません。
■一方で、もしかすると、法改正をせずに、法務局の運用で、居住年数要件を引き上げてしまう、ということも、あり得るかもしれません。
■R7年12月4日の自民党の会合で、政府側が「延長」の方針を示し、帰化の居住要件を現行の「5年以上」から「10年以上」に事実上引き上げる調整に入ったと、そして、その居住要件の延長は、国籍法を改正せずに運用変更でいこうと、検討している、といった一部報道が出ました。
■もはや、帰化の厳格化は既成事実になりつつあり、あるいは既に実態的には始まっているのかもしれません。
R6年11月とR7年11月の帰化許可者数の比較
■毎年11月、12月は帰化許可のピークシーズンとも言われていますので、11月単月でも、昨年と今年を比較することによって、何か傾向が見えてくるかもしれません。結果はこうなりました。

■これは11月単月の比較なわけですが、どうでしょうか、帰化許可者数は結構、減っています。
■1年間の数字で見ると、ここ2年は、
令和5年:8,800人
令和6年:8,863人
と微増、ほぼ横ばいだったわけですが、このR6年とR7年の11月の前年対比の数字を見ると、もしかしたら、帰化の厳格化は、実は実態的に既に始まっているのかもしれないとさえ思ってしまいます。
■11月の前年対比は、805人→682人(▲123人)、▲15%の減少という数字なのです。
■都府県別にみると、東京と大阪は辛うじて微増、横ばいですが、埼玉、千葉、神奈川、愛知といった上位組が、軒並み、数字を落としています。
■減少原因が何なのかはもちろん分かりませんし、11月だけの一時的な事象なのかもしれませんが、非常に気になる減り方です。