世界パスポートランキングの最新

■イギリスのコンサルティング会社「ヘンリー・アンド・パートナーズ社」は毎年定期的に『世界パスポートランキング(ビザなしで自国のパスポートだけで入国できる相手国の数)』を発表していますが、2024年7月発表の最新ランキングでは、日本は第2位となっています。

■一方、2022年からの前回までの3年間のランキング推移を見てみると、以下のようになります。

■上の表だけではわかりませんが、日本は2023年1月までは、6年連続でパスポートランキング1位をキープしていましたが、2023年7月のランキングで3位に陥落し、その後2024年1月に1位に返り咲きますが、直近2024年7月のランキングでは2位になっています。

■要するに、日本のパスポート力が徐々に落ちてきています。


パスポートランキング変動の背景

■そもそも日本のパスポートランキングが高順位である理由として
①経済大国、強大な消費能力がある
②政治的外交力がある
③日本は失業率が低く社会福祉も充実しているため、不法移民を目的に海外に渡航する可能性が低い
④海外にいる日本人の犯罪が少ない
⑤日本のパスポートは偽造されにくい造りになっている
などが考えられます。

■一方で、日本のパスポートランキングが下がり傾向にあることについても、何らかの理由があると考えるのが自然です。

■オーストラリアに本部をおく国際的なシンクタンクである「経済平和研究所(IEP)」が毎年発表を行っている『世界平和度指数(Global Peace Index)』は、世界各国の平和度合いを数値化したもので、これをランキング形式でまとめていますが、以下の3つのカテゴリにわたる項目でこの評価をしています。

社会の安全・治安
現在進行中の国内外の紛争
軍事化

『世界平和度指数(Global Peace Index)』の2022年~2024年のランキングは以下の通りとなっています。

■そして『世界平和度指数(Global Peace Index)』3つの要素のうちの1つ社会の安全・治安のランキングは以下の通りとなっています。


■これら2つの指標を見ると、日本は「平和度」が、そして、その1つの要素で日本社会の拠り所とも言える「社会の安全・治安」のいずれにもおいても、急降下感が否めません。

■そして経済指標である、IMF(国際通貨基金)発表の『名目GDP(国内総生産)』を見ると、日本経済の凋落ぶりも浮き彫りになります。

<世界名目GDPランキング>


世界一人当たりGDPランキング


GDPのランキングから言えることは、
①名目GDPは、日本は2023年にドイツに抜かれ4位に後退、2024年も4位であるが、5位のインドとは僅差であり、2025年の4位キープは非常に危うい
②成長率で見ると、2022年の日本のマイナスが突出、2024年は日本だけがマイナス成長
③一人当たりで見ると、もともと30位台と低位であり、またプラス成長の上位国とは対照的に2024年は日本はマイナス成長
であり、日本の足元の経済力は世界各国に比べ、明らかに力強さに欠けると言わざるを得ません。

「平和度」「安全・治安」「経済(一人当たりGDP)」のいずれにおいても上位に位置するシンガポールが、パスポートランキングで1位~2位をキープ(直近の2024年7月は、3国差つけてダントツの単独1位)していることは、全くもって頷ける結果なのです。


パスポートランキングはとても重要

■日本のパスポートランキングの下降傾向は、「平和」「治安」「経済」といった指標の動きに似たものがあり、そして「経済」の悪化は、「平和」「治安」の悪化を引き起こすとも言えます。

■ビザ(査証)の要否は、「相互主義」と言って、二国間で決まるものであり、日本が外交力に長けていることは言うまでもありませんが、それも「平和」「治安」「経済」あってのものです。

■経済指標であるGDPの「量(総額)」「質(一人当たり)」とも、日本はかつてない厳しい状況に立たされています。

■ちなみに、2023年の日本人のパスポート保有率は約17%、およそ6人に1人しかパスポートを持っていないというデータがあります(アメリカは約5割、イギリスは約8割の人がパスポートを保有すると言われる)。

■コロナ禍で海外になかなか行けないといった状況下、日本人のパスポート保有者が減ったという側面は当然にあるでしょうが、日本人には、自国のパスポートの強さに関心がない、そもそも海外旅行に行かない(国内観光が充実している)、という人が多いのかもしれません。

■一方で、日本に帰化することを希望する在日外国人は、アフターコロナにおいて増加傾向にあります。

■日本で長年暮らしてきた結果、純粋に日本人・日本社会の一員になりたいと考えているのはもちろんのことですが、「日本の強いパスポート」に羨望の眼差しを向けている在日外国人は少なくありません。

■話を「経済」に戻しますが、「経済」の低迷により、日本のパスポートがその順位をさらに下げ、その結果、「日本に帰化したい」と考える在日外国人が減ってしまうというような事態は、決して得策とは言えません。

■「経済」の低迷自体が問題なのであり、またそれにより在日外国人の「日本離れ」が進めば、さらに「経済」の悪化を招くという悪循環を生みかねません。

■このような意味からも、経済の鏡とも言える、パスポートランキングは、日本にとってとても重要なものなのです。

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